承徳避暑山荘
承徳避暑山荘は宮殿、湖、平野、山岳という四つの区域から構成されています。宮殿区域は湖の南岸にあり、地形も平らで皇帝が事務を処理し、儀式や生活を営む場所でした。この区域は敷地面積が10万平方メートルにも及び、正宮、松鶴斎、万壑松風及び東宮の四つの部分からなっています。湖区域が宮殿区域の北側にあり、中に八つの小島や中州が含まれており、敷地面積が合わせて43ヘクタールにも上ります。この区域は湖水が穏やかなうえ、小島も整然として並んでいます。一見すれば中国の南方らしい水郷のムードが漂うことは印象的です。北部に清い泉が湧き出ていて「熱河泉」と呼ばれます。平野区域は湖区域の北部の山の麓にあり、広々としています。東部は逞しい緑色に覆われ、一面の原生林の面影を呈しています。ここに万樹園と試馬埭が残されます。ここはうっそうと生い茂る森林もあれば青々として草原もあります。山岳区域は山荘の北西部に位置し、園林全体の5分の4を占めています。ここは山と渓谷が多く配列して数多くの建物や寺院がその間に点在しています。山荘全体は南東部に水を多く導入して北西部に山岳をよく配置したことから、中国の地形図の縮図だと言っても過言ではないです。
承徳避暑山荘の東部と北部にそれぞれ豪華な寺院の建築群が密集していて「外八廟」と呼ばれています。「外八廟」は薄仁寺、薄善寺(もう潰えた)、普楽寺、安遠廟、普寧寺、須弥福寺の寺院、普陀宗乗の寺院及び殊像寺から構成されています。「外八廟」は基本的に漢民族の建築様式をベースにしてそれぞれモンゴル族、チベット族、ウイグル族などの建築特色を取り入れて造ったものです。中国の多様な建築文化を見事にミックスした代表作だと評価されています。
承徳避暑山荘は自然の地形や山の勾配を巧みに生かし、造園の技術にも拘り、出来るだけ豊かな景観を表現しようとしました。そのために独特な色彩を作り出しています。宮殿区域の建築は素朴な感じがすると同時に配置も整っています。園林区域は自然そのままの趣きに溢れています。それに宮殿区域と園林区域とは調和がよく取れ、最高のムードを演出しています。
承徳避暑山荘は北京の故宮とは色合いが違い、壁が殆ど青色であり、屋根に灰色の瓦が被さっています。木材ができるだけ原木の色を保つようにしています。人々に簡素かつ落ち着いた感じを与えています。造園技術となると、こじんまりとした南方園林造りに使う繊細な一面もあれば、北方らしい雄大さも浮き彫りにされています。