バリコン(巴里坤)湖

バリコン(巴里坤)湖はバリコン草原中心の低地にあり、かつては蒲類海と呼ばれ班超の将軍が活躍した地として知られています。湖面の海抜は1585m、周囲を天山山脈に囲まれ、峰々の雪解け水によってできた大小合わせて12の川がバリコン湖に流れ込み、東西12㎞、南北20㎞、総面積約113?の巨大な高山湿地湖を作り出しました。
青々とした草原がバリコン湖を囲み、6月に入ると湖の水かさが増して牧草が生い茂り、夏の訪れとともバリコン湖は賑わいを見せ始めます。湖畔にはカザフ族のテントが数多く点在し、食事の支度とともに煙が緩やかに立ちのぼります。また、羊や牛が放牧され、緑の草原にのどかな風景が広がります。盛夏になると遊牧民の祭りが開催され、叼羊、競馬、姑娘追などの伝統競技とカザフ舞踊を見ることができ、観光客も合わせて多くの人々で賑わいます。
最近、湖畔に観光客向けの宿泊施設も建設され、カザフ族のテント訪問や草原の乗馬体験などもツアーに組み込まれ、夏の涼しさと冬の雪景色を求めて中国各地から多くの人々がバリコン湖を訪れています。

巴里坤湖の遊牧民カザフ族
バリコン湖で生活している遊牧民の多くはカザフ族で、季節に応じて放牧地を移動しながら遊牧生活を営んでいます。6月から8月にかけてはカザフ族の人々がバリコン湖畔にテントを張り、家畜を放牧して、小麦の栽培も行っています。
カザフ族にとってこの広々とした草原を自由に駆け回るために馬は欠かせない存在で、カザフ族の翼だとされています。カザフ族の間では幼い子供のうちから馬の世話をし、乗馬を覚え、男女共に馬術に長けており、「馬上の民族」と称されています。カザフ族の祭りの中で行われる叼羊、競馬、姑娘追いなどは騎馬の技術を競う伝統競技で、騎馬技術に優れた者は周囲から慕われています。

巴里坤湖の阿肯(アケン)弾唱会
先に述べた馬と歌はカザフ族の二つの翼と言われ、バリコン湖のカザフ族の祭りでは騎馬競技の催しが見られるほかに、即興の歌の腕前を競う阿肯弾唱会も開催されます。「阿肯」はカザフ族の言葉で詩人歌人への敬称を意味し、阿肯弾唱はカザフ族の伝統芸能で、1人の独唱と2人の歌掛け合いに分けられ、独唱は歌手がドンブラの楽器を弾きながら英雄叙事詩や物語を朗誦します。また、二人の掛け合いではカザフ族の人々の間で歌い継がれてきたメロディーを踏んで即興の歌詞を付けて歌っていくので誰もできることではなく、相当の歌唱表現力を必要されています。阿肯弾唱会に民族衣装を身にまとったカザフ族、モンゴル族、ウィグル族の人々がバリコン湖のほとりに集まり、夜が明けるまで歌い踊り、草原全体がは熱気と歓声で包まれ大きな盛り上がりを見せてくれます。