杭州西湖文化景観

 西湖は杭州市の西部に位置し、麗しい湖や山水、および数々の名勝旧跡で国内外によく知られています。杭州は中国の有名な観光地として昔から「人間の天堂」と譬えられています。西湖は東西南北にそれぞれ山と町に囲まれております。昔から西湖の名前がよく伝えられ、多くの文人たちに賞賛されました。中に名勝旧跡や建築物、橋、堤防などがよく整備され、自然の景観と見事に呼応してさらにその美しさを増幅させています。南宋以降、「西湖十景」は「天人合一」と呼ばれるもっとも理想的、そしてクラシック的なポイントとして人々に親しまれてきました。西湖文化景観は中国の景観美学における理念などをリアルに表現してそして中国の園林の設計に多きな影響を与えたと言えます。西湖文化のキーポイントは人間の山水に対する感動と情熱を掻き立てることにあります。

西湖の自然山水は「秀美(景色の麗しいこと)」により有名であり、湖水が周囲の美しい山並みと繋がっています。馬蹄形になっている低い山並みが湖の南、西、北側に緩やかな曲線で飾っています。これらの山並みに囲まれた湖水も長閑な雰囲気を醸し、まるで鏡のようです。このような西湖に感化された古代の文人たちは創作につながるインスピレーションを湧かしました。さらに中国の山水画への創作にもつながる題材ともされました。歴代にわたる詩人たちも情熱を込めて西湖を無尽蔵の創作の対象とみなしました。これで西湖はあまりにも多い歴史的、文化的な中身を育みました。
 西湖はもともと銭塘江と繋がる干潟であり、大量の土砂の堆積により今の状態に変遷してきました。西湖は長い年月にわたり、都市住民への給水、生態圏の保護並びに観光レジャーなどにおいて、かけがえのない役割を果たしてきました。西湖全域は蘇堤、白堤、孤山により五つの区域に分けられ、「湖の中に更に湖がある」というユニークな景観に築かれました。これは中国の伝統的景観を設計する時によく使われる手法であり、中国の南方水郷地方ならではのアイデアも導入しています。そこで西湖を代表できる景観の配置となりました。静かで長閑な湖水は周囲にある数多くの文化遺跡と息づくキャリアーとも言われます。2000年以上にわたる歴史は西湖の豪華絢爛な文化的蓄積を醸成させてくれました。特に西湖の西岸にある都市の発展と人口の増加につれて西湖の周辺の山々も次第に開発されました。古代の文人や学者などの好みの居住地になったばかりではなく、それぞれ仏教、道教、儒教が信奉を広める場所とそして機能されました。これらはいずれも西湖の豊かな文化的要素を充実させることができました。
西岸にある杭州市は西湖と切っても切れない関係があり、お互いによく調和が取れています。西湖を巡る山、水、町などの空間に展開する調和は人間と自然との独特な一体感と親密感を表しています。西湖の山水空間に見られる人間と自然との調和は中国の文人や学者の好みの山水のモデルにもうまくマッチできると言えます。そのため、西湖はかねてから中国の山水美学の思想を反映する景色の代表格と推奨されています。さらに人間の居住にも最適な場所とも認められています。
南宋にできた「西湖十景」は集中的に西湖の山水文化的景観をまとめています。
第一は「蘇堤春暁」であり、「蘇堤六橋」と言われる桃や柳などの樹木の鑑賞をテーマにした景色です。特に春を迎えた朝霧に煙っているムードがメインとなっています。
第二は「柳浪聞鶯」と言います。湖の周辺に植えた柳を鑑賞したり、鶯の鳴き声を聞いたりすることを指します。
第三は「曲院風荷」です。真夏になると湖水にハスの花が見事に満開し、多くの人々はそれに魅せられて鑑賞を楽します。
第四は「平湖秋月」であり、湖の北側に立って朧月が立ち込める湖面を眺めることです。ここからさながら月の中に迷い込んだような錯覚です。
第五は「断橋残雪」であり、銀世界に覆われた西湖はまた特別な趣が溢れています。民間に親しまれる「白蛇伝」の舞台として知られる「断橋」は堅い恋の聖地だと言われています。
第六は「三潭印月」です。北宋の時代に立てたとされる三つの石の塔は月の夜になると周りの湖水や水中の月と呼応して構成した不思議な景色のことを言います。
第七は「花港観魚」であり、池の中を泳ぐ金魚を鑑賞したり、季節折々の花を鑑賞したりすることができます。
第八は「双峰挿雲」であり、南高峰と北高峰が雲に霞んでいる景色をテーマにしたことです。
第九は「雷峰夕照」であり、夕日にシルエットにも映る雷峰塔の景色のことです。
第十は「南屏晩鐘」であり、南屏山の北麓にある淨慈寺から聞こえる鐘の音は妙に湖面を響かせることを指します。 どことなく禅の境地まで感じさせてくれます。