唐布拉草原

唐布拉草原は新疆ウイグル自治区尼勒克県から東に105km離れており、イリ(伊犁)地区において最も美しい草原として、「百里の画廊、天然の絵巻」と称されています。カシュガル河の上流の峡谷沿いに分布しており、唐布拉草原は阿吾拉勒山脈の北にある唐布拉峡谷の東側にせり立つ岩に因んで命名されました。「唐布拉」とは地元のカザフ語で「ハンコ」の意味を持ち、岩がまるで巨大な「ハンコ」に見えることからこの名で呼ばれるようになりました。

唐布拉草原は元々、清の時代の乾隆皇帝に封じられた伊犁将軍(当時の新疆地区における最高長官)の狩猟場及び避暑地として利用されていました。春や夏になると色とりどりの花が咲き誇り、人々を魅了する花の世界が広がります。また、それに呼応するよう草原内に点在するテント小屋や山間部に棚引く靄、気持ちよく聞こえる牧歌、放牧された牛、馬、羊などの嘶きなど、魅力満点の草原風景を織りなしています。冬が訪れると遠くの山々の頂上に積もった白い雪やひっそりとした密林、川を流れる清らかな水、どことなく顔を覗かせる険しく美しい岩石など穏やかで落ち着いた一面を見せてくれます。そして現在、特に注目されているのは唐布拉草原の渓谷にある数多くの天然温泉で、温泉スポットとしての開発が検討されています。いずれ、この地が長い旅路で疲れた観光客の心身を癒す絶好の場所になることでしょう。

唐布拉草原は冬になると一面が大雪に覆われ、気温も低下することから観光には不向きとなります。したがって気候的また観光的に最も適した時期は6月から10月までとされています。この期間は一面青々とした草原が綺麗なカーペットを敷いたようで、眩しい太陽の光に照らされながら人々を迎え入れます。悠々たる青空の下で大自然と放牧風景が融合した長閑な雰囲気をより一層感じさせます。また海抜が高いことから空気も爽やかに澄みきり、果てしなく広がる杉の密林が草原の空気を絶えず浄化しているようです。

しかし、海抜が高く天気がよく変化するので、雨具などの装備品を用意した方が良いです。また高山地帯専門のガイドに同行してもらい、安全には十分注意するひつようがあります。