タクラマカン砂漠
タクラマカン砂漠は昔から「死の海」「死の世界」などと伝えられており、「タクラマカン」とは「一度入ったら出られない」ということを意味しています。この砂漠は新疆ウイグル族自治区の南部にあたるタリム盆地の中心に位置し、東西に約1000㎞、南北に約400km、総面積336700?と中国最大の砂漠で、世界でもアフリカのサハラ大砂漠に次ぐ世界第2位の面積を誇る流動砂漠です。
果てしなく広がるタクラマカン砂漠はかつての海底が砂漠になったもので、現在もまるで波打つ大海原のようで、長年にわたり語り継がれたロマンが隠されており、国内外の多くの冒険家が目指す「楽園」とも伝えられています。その中でも、1901年に行われたニヤ古城遺跡の発掘は幾千年にわたるタクラマカン砂漠に封印された古代文明の存在を明らかにし、それと同時に、なぜこのような砂漠地帯で人類の文明が突然失われたのか、という「人類と自然の調和」という大テーマを喚起させるまでに至り、大きな反響を呼びました。このニヤ古城遺跡探険は中国国内でも重要探検の一つと指定されているほどです。
タクラマカン砂漠は北に天山山脈、西にパミール高原、南に昆侖山脈、東にロブノール低地が広がり、これらの山脈が土地を大きく遮り南方のインド洋からの湿った空気がほとんど流れず、降水量が極端に少なくなっています。また、北方からの寒気を伴う風が強く吹くことから、長い年月放置され現在の大砂漠が形成されました。流動砂漠が全体の約85%を占めており、砂丘は高いもので50~80mまで堆積しており、200mを超えるものもあるとされています。また、干上がった川底がタクラマカン砂漠の至る所に分布しており、東部にはかつての湖の痕跡も数多く残っています。砂漠の下には、古生代や中生代に存在した川などに形成された沖積平野、デルタなどが広範囲で見つかっています。砂漠の周りにはヤルカンド川、タリム河、和田河、チェルチェン河などの岸にはポプラや灌木質の柳が生い茂り、「砂漠の中の緑島」となっています。とくに砂漠を貫く和闐河の両岸には、蘆やポプラなどの砂地向きの植物が見事な緑のトンネルを創造しています。「トンネル」の中には川の水が流れていて、オアシスが広がり野兎や小鳥が生息しています。そのため、「死亡の海」というイメージと大きく異なっています。さらに、砂漠の下の地層には地下水や石油資源もあり、開発が進むにつれ「生命の禁止区」という言い回しを覆すに至っています。
タクラマカン砂漠の不規則な気候はもちろんのことですが、歴史的な謎に思いを馳せる地域としても知られ、昔からファンタジー世界のような神秘的な色彩を帯びてきました。ここでは幻のように変化する砂丘、風に強い植物、乾燥した気候、砂漠の中にある湖、緑のオアシス、突然消失する川の水、砂漠地帯に適応した動物、砂に飲み込まれたシルクロードの古城、大昔の村の遺跡、最近発見された石油資源等、数多くの特徴がタクラマカン砂漠の無限の魅力を演出しています。さらに、場所や時間帯によって優しい表情や荒れ狂う表情など様々なな変化を見せます。あたかも風が砂漠の運命を左右しているように、砂漠の移動や形状の変化が起こります。気候的にも晴れたかと思うと、突然曇りだし大雨に変わり、風が止んだかと思うとまた激しく吹き叫び、とても気まぐれだといわれています。気温も昼は太陽光に眩しく照らされて70~80℃まで上昇するのに対し、夜になると氷点下まで低下することもあります。過剰な水分の蒸発により発生する大規模な蜃気楼もこの地域のユニークな現象と言えます。このように気候は一年中乾燥しており、年間平均降水量は10~60mm程度にとどまっています。しかし、砂漠の中心の降水量は80㎜を超え、オアシスの形成に大いに貢献する形になっています。
タクラマカン砂漠の代表的な観光スポットとして、まずはその雄大な砂漠を眺めることですが、厳しい環境の中で生息するポプラ(胡楊林)が秋に黄色に染まっていく姿もお勧めです。この時期のポプラは金色の帯が一筋に伸び、うねった砂漠に場面に立ちすくんでいます。特に輪台の胡楊林公園では中国一の規模と言われるポプラの原生林が満喫することができ、白い雲、青い空に呼応する黄色に染まったポプラの木が多くの観光客の心を魅了しています。