チョゴリ(喬戈里)峰

チョゴリ峰は中国とパキスタンの国境地帯に聳えており、新疆ウイグル族自治区葉城県に属し、崑崙山脈の最高峰にあたります。また、チョゴリ峰(喬戈里)は中国名として用いられており、ほかに「K2」「ゴッドウィンオースティン山」とも呼ばれています。「チョゴリ」とはタジキスタンの言葉で「雄大で、高い峰」という意味を持ち、中国で最も美しい十大名山の一つとして数えられ、標高8611mは世界でもエベレストに次ぐ第2位の山として知られています。

登山界では、国際的にも登頂がかなり困難であるとされ、エベレストよりも登頂が難しいと言われています。その証拠にエベレストの登頂成功者は5000人を超えるのに対し、チョゴリ峰は302人に留まり、遭難事故も数多く発生しています。チョゴリ峰はあわせて6つの脊梁に分かれており、最高峰はピラミッドのように聳えています。一面が雪に覆われている頂上付近は雪崩が起きた後の痕跡が鮮明に見えるほど険しいです。北から南にかけてやや緩やかに隆起した凍土の勾配があり面積が広く、北側は勾配45°の傾斜があり斧で削ったように尖っています。北側に設置されたキャンプ地から頂上までの垂直距離は4700mあり、世界で標高8000m以上の山の中で垂直距離が最も高い山だと認められています。北側にある氷河はチョゴリ氷河と呼ばれており、入り乱れた地形の中にある砕けた氷河にはヒビが入り、氷河の西側にある険しい渓谷では崖崩れ、雪崩、氷崩れが頻繁に起こっています。また、チョゴリ峰の両側には長さ44kmにも及ぶ音蘇提蓋氷河が広がっています。

   チョゴリ峰は地形の複雑だけでなく、気候も厳しいものとなっています。まず、毎年5月から8月にかけて西南地方から湿った空気が流れ込み大量の雨水をもたらし、本格的に雨季に入ります。そして、9月下旬から翌年4月までは寒い北風が吹き、非常に寒い冬季を迎え、頂上の気温は-50℃まで低下することもあります。また、一帯の最大風速は秒速5mに達し、登山するにおいて劣悪な気候環境となっています。毎年5月から9月にかけては大量の氷河が溶け出し、川の水量が大幅に増すため山登りには不向きとされています。7月から9月にかけては比較的暖かい日々続くことから登山に最もふさわしい期間となっています。

現在までチョゴリ峰の登山コースは中国が開放しているコースの中で最も長いものとなっています。チョゴリ峰までは、まず新疆の葉城からバスに乗り新蔵国道沿いに約25km進むとマザーダラに到着し、そこから6日間、およそ90km歩くとチョゴリ峰に設置された登山大本営に辿りつくことができます。かつて、世界で初めてチョゴリ峰に挑戦したのは1902年に結成されたイギリスの登山隊でしたが、失敗に終わりました。その後50年間、幾度にもわたり挑戦され続けてきましたが、いずれも失敗しています。そして、1954年7月31日、イタリアからの登山隊が初めてチョゴリ峰の登頂に成功しました。その後、アメリカ、日本、ポーランド、韓国、スペイン、中国などの登山隊が登頂に成功しています。ところが、統計によるとチョゴリ峰の登頂には、遭難、雪崩などによる原因で死亡率が7分の1の確率で存在し、世界一のエベレスト登頂よりも高く、人々から恐れられています。そのために登山するには高い技術と万端の装備が求められています。また、キャンプからロープを伸ばし、頂上まで5500mが必要となります。命をつなぐロープであるため強靭で切れないことが必須です。ほかにも登山者に対する多くの条件が定められており、豊富な経験と体力を備えた登山のベテランに限り挑戦することが許されています。

また、このように登山するためには食料や工具を含め大量の装備が必要となり、山中に残された大量のごみが一つの問題となっています。