『モンゴル秘史』によると、「アルシャー(阿拉善)」という言葉は「賀蘭山」という山の名の発音が訛ったものと言われています。アルシャー盟は内モンゴル自治区西部に位置し、総面積27万㎢で、人口は18万人、主な民族としてモンゴル族、漢族、回族、満族、チベット族などの人々が居住しています。各民族では宗教を信奉する歴史や伝統があり、中でもモンゴル族は特色の豊かな民族として知られています。アルシャー盟では歴史上でもラマ教、イスラム教、キリスト教、仏教、カトリック教などの五大宗教が信奉されており、特にモンゴル族におけるラマ教の信奉には長い歴史があります。そのため、この地ではラマ教寺院が多く建立され、規模も大きく、造りの精巧さも注目を集めています。
アルシャー盟は古代人類の発祥地の一つと言われ、考古学者の調査によってアルシャー盟エジン(額斉納)旗で旧石器時代の人類の生活の痕跡が見つかっています。また、賀蘭山や曼徳拉山、竜首山などには、新石器時代、青銅器時代、鉄器時代に刻まれた岩画が数万枚も残されています。現在、これらの岩画は早期の古代遊牧民族の宗教信仰や生活風俗、経済生活などを研究する上で貴重な文化的資料にもなっています。そして、原始社会末期からその後の奴隷社会にあたるの商、周の時代にかけては、弱水流域や居延海畔一帯で古代先住民が生活していた痕跡が残っています。その後の歴史では秦の始皇帝が6国を統一した後、アルシャー盟北部に北地郡を設置し、漢の時代には北地、武威、張掖の3つの郡によって管轄されていました。その後も各時代に防衛府の設置や民族による占領を繰り返し、1697年(康煕36年)に初めてアルシャー旗という行政区が設置されました。1980年4月にはアルシャー盟を成立して内モンゴル自治区の所属に定められました。
アルシャー盟は大陸性気候に属し、雨量が少なく乾燥しています。また、風が強く砂埃が頻繁に発生します。冬は寒いですが、夏は猛暑となり、年間平均気温は6~8℃ほどです。降水量は地域によって40㎜~200㎜となっており、総じて少雨であることが分かります。
ここには、豊かな民族風情を生かした文化が「非物質文化遺産」に多く登録されています。例えば「羊の丸焼き調理法」や「アルシャー盟の絨毯製作法」、「モンゴル将棋」、「アルシャー盟式相撲」、「伝統的舞踊」、「モンゴル族の駱駝の飼育法」などがあり、その数々の文化は人々を引き付ける観光資源となっています。観光スポットとしては、アルシャー盟左旗のテンゲル(騰格里)通湖草原旅行区や延副寺、営盆山景観公園、アルシャー博物館、広宗寺やエジン河流域に分布する東風航天城やエジン胡陽林自然保護区、黒城遺跡、居延海などが挙げられます。また、アルシャー右旗にもバダインジャラン(巴丹吉林)砂漠、マンデラ(曼徳拉)山岩画など魅力ある観光スポットが多く存在します。