雲南民族博物館
雲南民族博物館は1995年に開館し、雲南民族村の正門と道路を挟んで向かい側に位置します。博物館は回廊式二階建ての建物で、敷地面積が13万㎡、建築面積が6万㎡を誇り、所蔵品の総数は12万点を超えています。また、16の展示室のほかに、視聴設備の整った講堂や会議室、接待室なども設けられ、中国で最大規模の民族博物館となっています。また、館内の常設展示室は『雲南服飾と制作工芸』、『民族文字古籍』、『民族民間面具』、『民族民間陶芸』、『民間瓦当』、『伝統生産生活技術』、『民族民間美術』、『民族楽器』など8つのテーマで分けられており、古籍、服飾、楽器、生活用具、労働用具など雲南省に暮らす少数民族の歴史や文化、風俗を反映する品々や資料が多数展示されています。
さらに博物館では講座や学術会議などを開催し,国内外における各分野の研究機関や博物館と学術交流も行っており、年間を通して雲南の少数民族は祭日には博物館の一角を利用し、民族舞踊や伝統工芸を披露し、それぞれの民族文化を紹介しています。このように雲南民族博物館では雲南省民族学の調査研究センターとして、また民族文化交流としても大きな役割を担っています。
『雲南服飾と制作工芸』(1階)
民族服飾コーナーは「早期服飾」、「普段着と晴れ着」、「宗教祭祀服」の3つに分けられ、それぞれの民族衣装が独自のデザインや模様を持ち、各民族独特の情調と美意識を反映しています。
制作工芸コーナーでは少数民族の染織技術と刺繍技法が紹介されています。展示さている品々は各民族で刺繍の造型美を競い合い、タイ族とチワン族の錦織、ペー族とミャオ族の藍染め布などの工芸品や水平織機、腰機などの数多くの織機も展示されています。
『民族文字古籍』(1階)
民族文字古籍コーナーは「原始記事」、「民族古籍」、「工作成就」の3つに分けられ、結縄と木刻、符号絵画などの古代の記録?通信手段が紹介されており、雲南各民族の碑刻、文献、口頭伝承の神話から収集された文字古籍資料まで多岐にわたる研究成果が展示されています。
『民族民間面具』(1階)
民族民間面具コーナーは「跳神面具」、「生命礼儀面具」、「祝日祭祀面具」、「演劇面具」、「鎮宅面具」に分かれています。宗教活動、祭日、成人式、婚礼、葬式など各民族の様々な行事に用いられる面具は色彩や形状が豊かで、少数民族の精神世界に深く関係していると言われています。チベット族の面具「羌姆」は「跳神面具」と呼ばれるものの代表で、イ族は冠婚葬祭に数多くの面具を被って踊ります。さらにこれらの面具はタイ族とチワン族の演劇に用いられ、水族とイ族の玄関や屋根に置かれて鎮宅用の家内装飾としても使用されています。
『民間瓦当』(2階)
瓦当とは建築物の屋根の先端部を指し、この民間瓦当コーナーでは各民族の屋根瓦を装飾する118品の陶器瓦当、金属瓦当、流離瓦当を展示しています。展示品の中には虎や龍、十二支動物などの動物紋と菊や梅、牡丹などが描かれた植物紋があり、文字瓦当は「寿」「福」などのめでたい意味を持つ文字が篆書や隷書などの書体で書かれています。
『伝統生産生活技術』(2階)
このコーナーは生産技術と生活技術に分けて紹介されています。採集漁猟時代から農耕時代に至るまで各民族が農業や漁業で用いた道具や資料が展示され、少数民族独特の草葺屋根家屋や木造高床式家屋などの模型も作られています。また製陶技術、製紙技術や伝統搾油、搾糖技術なども紹介されています。
『民族楽器』『民族民間陶芸』『民族民間美術』(2階)
雲南省は以前から「楽器の王国」と言われ、民族楽器コーナーでは各民族の楽器が古代楽器、吹奏楽器、擦弦楽器、拔弦楽器、打奏楽器に分けて展示されています。吹奏楽器の中では特にタイ族やフルスやイ族の「巴烏」、チンボー族の「吐良」がよく知られています。またナシ族の儒教道教の儀礼音楽「洞経音楽」とチベット仏教の儀礼音楽など少数民族に関連の深い宗教音楽も数多く紹介されています。
民族民間陶芸コーナーでは国家級非物質文化遺産として登録されたタイ族の紅陶、迪慶黒陶、建水紫陶の製陶技術が紹介されています。
民族民間美術コーナーの展示品には各民族が祭祀の際に燃やす木版印刷物「甲馬」であるトンパ木俑、ペー族本主木彫り、タイ族の故事布画と仏幡などいずれも宗教色の強い民間美術品が展示されています。