元陽棚田
元陽県は昆明から300km離れ、雲南省南部の紅河ハニ族イ族自治州に位置し、主にハニ族、イ族、タイ族などの少数民族がこの地で代々生活しています。そして、県内に広がる見事な棚田群はハニ族が1200年前からつくり上げてきたもので、「世界の奇跡」と言われ、見る人を感動させる壮観な風景は「雲の梯子」とも称され、国内問わず多くのカメラマンに人気の観光地となっています。また、国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産に認定されており、現在、ユネスコ世界遺産へも登録申請中です。
元陽棚田は最大傾斜75°の山の斜面につくられ、標高800~1800m間に分布し、総面積は12万ヘクタールを越えます。その棚田の間には5000本近い用水路が流れており、5000段を超える大規模な棚田も見られ、ハニ族は長い年月をかけて元陽棚田を築き上げてきました。紀元前3世紀、ハニ族の祖先とされる「和夷」という遊牧部族はチベット高原から南下し、大渡河流域で稲作を始め、約1200年前の唐の時代初期から哀牢山区に移住して棚田の開墾を始めました。ハニ族の棚田は昔から有名で、多くの記録が残されており唐の時代の文献にも記載されています。
元陽棚田は壩達観光エリア、猛品(老虎嘴)観光エリア、多依树観光エリアの3つのエリアに分かれており、11月から翌年4月までがベストシーズンといわれています。麓から山頂まで続く棚田にはそれぞれ水に張られ、田んぼの一面一面は光が反射した鏡のように輝き、旧正月ごろになると雲海と水が張った棚田が幻想的で、2月になるとピンク色の桃の花や白い梨の花、黄色い菜の花が咲き乱れ、のどかな美しい田園風景に鮮やかな色彩が広がり、多くのカメラマンたちがその景観を求めてこの地を訪れます。
元陽棚田の水循環システム
山には森林、中腹には村、村から麓まで棚田、棚田の近く川が流れている、というような「森林?村?棚田?河川」が一体となった原始農業生態系が元陽では現在でも保持されています。また、元陽県内にある哀牢山脈は北西から南東にのび、北からの寒波をこの山脈が防ぐので年間を通じて比較的に温暖な気候は続きます。そして、県内を流れている紅河の水から水蒸気が湧き上がり、上空で冷やされた水分は村周辺の森林に蓄えられ、湧水から渓流となって村を流れ、用水路によって棚田に至った水は順々に田を澄んだ水で潤して、川に流れ込んでいきます。このようにハニ族の人々は自然を巧みに利用し、巨大な水循環システムを作り出し、この地で発展してきました。
村の上方にある森林は「寨神林」と言われ、神の宿る場所として樹木の伐採が禁止されています。また、村に水碓や水碾などを築いて水力を利用し、「分水木刻」を活用して水量を分ける等、ハニ族は水を大切に維持、管理しています。
壩達観光エリア
壩達観光エリアは箐口、全福庄、麻栗寨などを含む面積666ヘクタールに及ぶ区域です。箐口は新街鎮から6km離れたハニ族の村で、現在は観光地として開発されています。村の中にレンガ壁茅葺きの椎茸屋根の民居が立ち並んでいるのが特徴で、ハニ族の民族衣装や農作具、歴史資料が展示されている民俗陳列館もあります。水力を用いた水碓、水碾小屋や寨神林、分水木刻、用水路などハニ族の独自の灌漑施設も見学することができます。椎茸屋根の民居を挟み、雲海が絶えずに発生する景観は撮影ポイントとしても高い人気があり、新街鎮から3km離れた竜樹壩も、棚田に赤色の藻が生えて青空の下で輝く鮮やかな色彩はピカソが描いた抽象画のようで人気のポイントとなっています。
猛品(老虎嘴)エリア
猛品(老虎嘴)エリアは阿猛控、保山寨など面積460ヘクタールに及ぶ区域で、棚田の段数が5000を超え、その果てしなく広がる老虎嘴棚田は元陽棚田の中でも最大級だといわれています。新街鎮からは20km離れ、展望台がある崖がまるでトラが口をあけているように見えることからこの名がつけられました。この展望台から周りの景色を見下ろすと棚田の段差がなくなり繋がっているように見え、棚田の畦に組み入れた幾何学的な模様は海であったり花であったりと人々の想像を掻き立て、「大地の彫刻」とたたえられる自然景観を生み出します。また、老虎嘴棚田の夕日は太陽が沈むにつれて銀色、黄金色、赤色へと移りゆく色の変化を演出し、穏やかで独特の風情に心が癒されます。
多依樹エリア
多依樹エリアは多依樹、愛春、大瓦遮など面積666ヘクタールに及ぶ区域で、多依樹棚田は新街鎮から27km離れ、標高1900mに位置して1年間で約200日は霧に覆われています。そのため多依樹棚田では雲海が有名で、眺めている間にも霧や雲は流れ、刻々とその表情を変えていく風景が特徴的です。また多依樹棚田の夜明け前と日の出後の二景観も同様に、晴れた日には夜明け前は月光に照らされた棚田と雲海が青白く輝き、幻想的な景観が広がります。夜が明けて朝日が昇るにつれて棚田や雲海が赤く染められて、新たな一日と共に新たな棚田世界が訪れた人々の目を楽しませてくれます。
元陽撮影ポイント:
元陽の撮影ポイントは主に県町から約30km離れる新街鎮周辺の村落に分部している。
お勧めの撮影ポイントと観賞ルート:
●第一撮影と観賞ポイント:多依樹村。元陽県から約55km、新街鎮から約25km。
※撮影と観賞内容:多依樹棚田の日の出と雲海。
※撮影場所:多依樹村の道端又は山上又はその周辺のお気入りの行ける場所。
※ベスト撮影タイム:夜明け時と午前中。
●第二撮影と観賞ポイント:麻栗寨。元陽県から約43km、新街鎮から約13km。新街鎮と多依樹村の間にある。
※撮影と観賞内容:ハニ族の棚田、雲海、民居などの建築。
※ポイント地点:全福荘棚田、覇達棚田、麻栗寨棚田、上馬点棚田とハニ村落。
ここの棚田の色は午後16:00以後、白→ピンク→真っ赤→ピンクの順序に変わるので、中々素晴らしい。
※撮影場所:道端でも良いが、山道を沿って村へ行く途中にも結構見晴らしの良い場所がある。また、棚田の畦を歩き、ハニ族村に入って撮影するのも感動する撮影ルートになると思う。
※撮影タイム:昼間。
●第三撮影と観賞ポイント:老虎嘴。元陽県から約50km、新街鎮から約20km。
※そこからの棚田撮影は空撮のように感じる。幅広い棚田は目の下に展開し、まるで巨大な白花が満開しているようだ。老虎嘴棚田は撮影家たちに世界最壮美な田園風景とも評価されている。
※撮影タイム:午後から夕方まで。
●第四撮影と観賞ポイント:龍樹覇。元陽県から約34km、新街鎮から約4km。
※夕焼けと日没を撮影するベスト地点。冬なら、水面に紅い水草が浮いている。夕焼けに照らされた棚田は真っ赤になり、何とも言えない美しい夢幻な景色を成す。
※撮影場所:桃荘村付近の舗装道路から50m~100m下りた棚田の畦。
※撮影ベストタイム:夕方日が沈む時。
上記の四大撮影と観賞ポイント以外、ハニ族の村落と棚田を撮影できる場所が沢山ある。それも4大観光スポットの移動途中に位置しているので、時間があったら、ゆっくり楽しむことができる。