三江トン族自治県
三江トン族自治県は広西チワン族自治区の北部柳州市にある貴州省と湖南省の境界に位置し、桂林市からは約167kmの距離にあります。総面積2454?、3つの鎮と10の郷と3つの民族郷を管轄しており、人口は約35万人、そのうちトン族の人口が19.2万人で、中国国内5つのトン族自治県の中でトン族の人口の最も多い地域となっています。またミャオ族、ヤオ族、チワン族などの多くの少数民族が住んでいます。
1000年以上の歴史が持っているトン族ははるか昔から親切で善良、勤勉で愛想の良い民族だと讃えられています。さらに娯楽文化を愛し、歌や舞踊が上手で祭りも多数開催されるので「民間文化芸術の里」と言われるようになりました。トン族の木造建物や刺繍、農民画なども国内外で有名になっています。さらにトン族の人々は建築方面に優れ、日本の錦帯橋に用いられる建築技術を持っており、三江県には壮麗な風雨橋や多重構造の鼓楼など数多くのトン族建築が保存されています。
次にトン族の木造建築や民族習慣についてご紹介します。
1. 鼓楼
以前からトン族村の要であり、現在ではシンボル的な存在になっています。鼓楼は木材同士の繋ぎ目を組み合わせて、釘を一本も使わない合理的な建築構造になっています。屋根の形状は四角形、六角形、八角形になっており、鼓楼のホールにかつて緊急時などに周囲に知らせるために用いられた太鼓が吊るしてあり、鼓楼と呼ばれるようになりました。
三江の鼓楼は世界一の鼓楼と讃えられ、敷地面積?高さ?階層?支柱の太さで世界一の記録を誇っています。敷地面積は600㎡、周りの広場を含めると4000㎡を越えます。トン族の社交場や集会所、祭りの際によく使われています。最も高い鼓楼は42.6m、階層は27階で、最上階の2階を除いた25階までは瓦の表が等間隔で最上階に傾いています。60本の支柱がある古楼の主柱を成す4本の柱はそれぞれが直径70cmを越えています。第1支柱の樹齢は208年、直径85cm、長さ27m、第2支柱の樹齢206年、第3?第4支柱の樹齢も100年以上を誇ります。鼓楼内にはトン族独特の民族文化を表現した絵画が数多くあり、トン族の歴史や素晴らしい建築技術を示しています。
2. 風雨橋
花橋とも言われ、トン族の交通に用いられる橋で、住居が集中している所には必ずあります。橋脚は石造、上部は木造の橋で、鼓楼と同じく釘を一本も使わない建築構造になっています。橋の両脇には木造の欄干やベンチ、屋根があり、長い回廊の形状をしています。橋脚の上部には塔や亭が建てられており、軒の先端部は跳ね上がり龍や鳳凰の形をして、頂きには瓢箪や鶴などの縁起物が付いています。屋根をつけることで安定度を増し、腐食を防ぐ働きをもち風雨をしのぐことから風雨橋と言われるようになりました。
三江市街から北に16kmの位置にある程陽風雨橋は1916年に建てられ、100年近い歴史を持っており、トン族の代表的な風雨橋とされています。永済橋や盤龍橋とも言われ、現存する最大規模の風雨橋で中国木造建築の珍品で、橋脚は5本、長さ77.7m、幅3.4m、高さ10.6mを誇ります。橋の上には5つの楼閣、柱や屋根には民族性の高い彫刻や絵画があり、全体像を見るとその構造と壮麗な姿に驚かされます。実際に橋を渡るとトン族の伝統的な織物などの民芸品も並んでいるので、お土産散策にもいいかもしれません。程陽橋の先の村内にも平寨や岩寨など計8つの風雨橋があります。
3.トン族の結婚式
一般的に春節(旧正月)になると、程陽景勝地にある八つのトン族の村では春節二日目に結婚式を行い、翌日新婦は里帰りをすることになっています。しかしその里帰りには新郎は同行することができません。しかし、新郎の兄弟や親戚は天秤棒で結納を担ぎ、長い行列を作り花嫁の里に向かいます。その行列が長ければ長いほど新郎家の財産が多いことを意味しています。新婦の付き人には新郎の村で最も綺麗な女性が選ばれ、新婦は行列の最後尾から美しい布を羽織って進んできます。また、新郎の財産を示すため、途中の村々で爆竹を鳴らします。花嫁の里に到着すると、付添いは村に入らずそのまま新郎の家に戻ります。そして、新婦の家族が新郎の村から来た人々に皆に喜びお茶を振舞います。夜のとばりが降りると、送迎で訪れた未婚男性は新婦の村の未婚女性と集まり語らい合い、自分の好きな人を探す習慣があります。
4. 山賊追い祭り
三江県独?郷唐朝村に伝わる独特な祭りがあります。かつて、この村の周辺には山賊が多く村の人々の生活をかき乱していました。そのような事が起こってから魔除けと平安の祈りを込めて、新年一日に行う祭りです。山賊を追い払い、皆でお米やお酒を少しずつ出し合い一緒に百家宴を召し上がります。