胡同
「胡同(フートン)」とは中国語で「路地」とか「横丁」という意味である。北京の胡同は有名でその起源は元代まで遡ると言われている。モンゴル語の音からきているらしい。北京には数千本と、おびただしい数の胡同が故宮の周囲に張り巡らされている。大半は元と明、清、この三つの時代につくられたものである。
胡同の幅はそれほど広くなく、両側には煉瓦敷きの平屋が並び、屋敷一軒一軒にそれぞれ異なる門を持っている。胡同の両側に立ち並んでいる平屋とは、北京の伝統的な住宅『四合院』と呼ばれる建物のことだ。形は「回」という字と似ており、周りを外壁に囲まれて、中央に庭があり、東西南北の四つの方向に四軒の部屋が建てられている。北側にある部屋は正房(母屋)、東西両側の部屋は廂房(シャンファン)、南側にある部屋は倒座と呼ばれる。高位高官や富豪の四合院は広々とし、柱や外廊下、軒に絵や彫刻が施された華美なもので、主の住む四合院の前後に別棟を備えるものも多かった。それに比べ、庶民が住んだ四合院は構造が単純で、門は狭く軒も低いものであった。一つの四合院には、二、三世代の家族が一緒に生活し、四世代の大家族が住むこともあった。
北京の市街地では、胡同はなおその面積の三分の一を占めていて、人口の約半数を占める人々がそこで暮らしている。胡同では昔と変わることなく今でも、庶民の生活が営まれているのだ。胡同は北京という都市の"血脈"とも言えるだろうし、これからもずっと北京の歴史、庶民の生活の改善ぶりを記録しつづけていくことだろう。