黄龍渓古鎮
黄龍渓古鎮は成都市から定期バスで南に40㎞、1時間ほど進んだ自然と歴史に恵まれた水郷の町です。この古鎮は約1700年の歴史を持ち、以前より「四川一美しい古鎮」と称えられてきました。この地は錦江と鹿渓河の合流点で、かつて赤水と呼ばれた場所に竜が隠れ住んでいたことから黄龍渓と名づけられました。川幅が広く水流も穏やかなので水運に最適な場所として発展し、歴史上でも軍事的に争奪し合った地であり、三国史で有名な蜀の諸葛孔明が南方遠征の兵馬基地にするなど蜀国と非常に関わりの深い地でもあります。また上流の成都と下流の重慶や楽山からの多くの船舶がこの地に停泊し、周囲の豊富な農産物が往来したことで早くから四川省西部における名高い水上貿易街として栄えていました。さらに黄龍渓古鎮は地理的条件だけでなく、豊かな観光資源や多くの文化遺跡にも恵まれるため、「四川省の歴史文化名鎮」「中国民間芸術火竜の郷」と評されています。現在、地域政府は古鎮など様々な観光資源を活用し、農業をベースとした新しいサービス産業(第三産業)での町作りに積極的に取り組んでいます。
黄龍渓古鎮の町は古い石畳みや牌坊、寺、祠(日本における神社)、古民居など多くの観光資源に恵まれ、清の時代に建造された建物も完璧に遺されており、映画やドラマのロケ地として注目を集めています。それらの建物は木造の組立ての上に青い瓦の屋根、周囲に美しい模様で窓の欄間も素朴で長閑な雰囲気を醸し出しています。外には樹齢300年を越える6本のガジュマルが村全体を覆い被さるように立っています。さらに町には鎮江寺、潮音寺、古龍時という3つの寺が現存しており、毎年旧暦6月9日及び9月9日に開催される縁日には昔日を思わせる賑やかな一日が再現されます。また、古鎮内にある「川音閣」ホテルは音楽をテーマにした独特の宿泊施設で、もともと四川音楽学院の教授だったオーナーがお客さん一人一人にバイオリン、ギター、ピアノなどを教えてくれるなど貴重な交流体験をすることができます。
黄龍渓古鎮はその歴史の長さから地元の豊かな物産を生かして開発された美味しい食べ物が数多くあります。特にこの地の名物とされている「一根面」(1本のヌードル)は四川省ばかりではなく、中国全土でも有名で、この独特の「一根面」は2011年10月に開催された中国美食観光祭でチャンピオンを獲得し、黄龍渓の「一根面」は2012年3月に開催された中国天府古鎮美食コンテスト大会で「中国天府十大古鎮美食」のチャンピオンを獲得するなど多くの功績を持つ一品です。また地元の名産として、手作り竹細工がお土産として大変有名で、繊細かつ強靭な竹の糸を様々な形状をした焼き物の表面に編み付けたもので、中国の工芸品の一絶と言っても過言ではありません。
黄龍渓古鎮では1年を通して様々な行事が開催され、最も有名なものとして旧暦1月1日から15日までの期間に盛大に行われる「火龍節」と「龍獅文化芸術節」という民間行事があります。この時期は歴史の文化の風情溢れる古鎮と中国の旧正月の賑やかな雰囲気で、日本では味わうことのできない日々を満喫することができます。