洛帯古鎮

   「中国水蜜桃の郷」「中国国際桃花節」を開催する場所として知られている洛帯古鎮は四川省成都市の近郊に位置し、成都市内から18㎞とあらゆる交通が利用でき、アクセスにも便利な古鎮として「成都の裏庭」と呼ばれています。古鎮の大半は客家人の古街のように見事に保存され、「世界客家人第一の町」と称えられています。客家とは、西晋時代末期、唐末期、南宋時代末期などに戦乱を避けて黄河流域の中原地方から南下し、江南、江西、福建、広東などの地域に移り住んだ移民者のことです。またこれらの移住先からさらに四川などに移り住んだ者や海外への移民者も客家と言われています。現在でも出身地ごとに建てられた客家の活動拠点となった会館が残っています。言い伝えによると三国時代には既に一つの町としての歴史が始まっており、その時は「万福街」と呼ばれました。「洛帯」という名前の由来には二つの説があり、その一つが三国時代の蜀王の劉禅が井戸の中の鯉を捕まえようとして、うっかり腰に付けた玉帯を落としてしまったという逸話に因んだ説で、もう一つがこの一帯で天空から玉帯のように流れ落ちる川があることに因んだ説です。また、「洛帯」という名称が初めて唐の時代の書籍にはっきりと記載されており、1000年以上の歴史を持つ古い町であるということがわかります。

   洛帯古鎮は観光資源としてだけでなく歴史的文化財が町のいたるところに点在しています。特に1000年の歴史を持つ客家人のユニークな建物が観光客の人気を集め、町の約85%の建物が客家系のものとされ、名実ともに四川省における客家人の集中居住地の代表する建築物として認められています。これらは主に「一本の街道と七本の路地」として区分されており、整然された空間が展開されています。町の左右には明清時代の建築様式をもつ店が軒を連ね、メインストリートである「一本の街道」は全長1200mもあり、幅8mの道全てが石畳みで整備されています。七本の路地は平行に街道を垂直に交わるように配列しています。そして、この町で最も厳重に保管されている国の重要文化財として「四大会館」(広東会館、江西会館、湖広会館、川北会館)と客家博物館及び客家公園があり、総面積約20000㎡の広さを誇ります。これらは中国古代建築において豪華かつ燦爛な建造物であると高く評価されています。また各会館内は主柱から天井まで鳳凰や龍、人物などの色鮮やかな絵がきめ細かに描かれ、いずれも高い芸術性を持っています。さらに巨大な半円形の「風火塀」(防火壁)は青煉瓦で築かれ、その造形美はさながら空を舞いあがっている龍のように見え、この時代の建築物の最も特徴的な点とされています。

   これらの建築物が客家人の移民文化を裏付ける文化財として、また洛帯古鎮の貴重な観光資源としてもその観光文化の魅力をあますところなく表現しています。そして、この客家人文化に関する伝統的な風俗習慣が現在まで伝えられてきました。例えば客家方言といわれる独特の言葉や客家人の儀式として複雑な結婚の風習、実生活の中で生まれた素朴な感情を伝える民歌(民謡)、人々に親しまれている客家人の火龍や水龍を振り回す習慣、昔からずっと伝えられた美しい物語などがあります。また客家人の昔ながらの工芸品として主に木造細工や布工芸、藁編み、そして特徴的な服飾があります。最後に客家人の伝統料理も観光客にとって楽しみの一つとなっています。