黄姚古鎮

  黄姚古鎮という街は、広西チワン族自治区東部の賀州市に位置する。街は、広西チワン族自治区のシンボルとも言える「漓江」の下流に広がり、有名な桂林の街からはおよそ200キロ離れている。 
黄姚古鎮は1000年余りの歴史があり、古い街並みが今も残されている。通りに並ぶ建築群を見ていると、中国古来の「風水」の考え方に基づいて建てられていることが分かる。 
この街は、風水で使用する八卦鏡にちなんで、正八角形をしている。街の中心を通るメインストリートの両側には、多くの横丁が延びている。その形はまるで、青い龍が踊っているかのようである。 
黄姚古鎮は、昔から商業で栄えていた。この街に暮らす人はほとんどが皆、何らかの商売をしている。そのため経済的に豊かで、街は美しく整備されている。また、歴史的な建築群が、特色ある景観を作り出している。この街の特徴について、地元の観光業に携わる朱祥桂さんは次のように語っている。この街には、『絶景』と呼ばれる風景が4ヶ所ある。ひとつ目は、樹齢が長く大きなガジュマルの木。ふたつ目は、街を流れる『姚江』という川。みっつ目は、石畳の道。よっつ目は、木造の建築物である。
黄姚古鎮のある場所は典型的なカルスト地形で、周辺には形の変わった峰が多くそびえ立っている。また、「姚江」「珠江」「興寧河」という3つの川が街を包み込むように流れており、美しい水郷を形作っている。
黄姚古鎮には多くの少数民族が住んでいる。街では、各民族の独特な文化や風習を垣間見ることができる。ヤオ族の特徴は、美しい黒髪と、それを鮮やかに彩る装飾品である。彼らは、通りにテーブルを並べ数百メートルにも及ぶ食卓を作り、大規模でにぎやかな宴会を楽しむ。またチワン族の人々は歌や踊りが上手で、中でも「火の猫の踊り」という民族舞踊が有名である。 
街には、「仙人の井戸」と呼ばれる5つの人工の池がある。池の大きさは3平方メートルほど。深さは1メートル程度で、壁面には石が敷き詰められている。泉から湧き上がった地下水は、まず1番目の池に流れてくる。そして順番に、2番目の池、3番目の池と流れていくのである。この5つの池はそれぞれ役割が決められている。
「1番目の池の水は、みんなの飲用水である。ここでは、手すら洗ってはいけません。2番目の池の水は、野菜を洗うための水である。ここでも手を洗ってはいけません。3番目の池は、洗濯場です。」このようにこの町では池によって用途を限定することで、大切な水資源を保護しているのである。長い歴史を紡ぎ続ける黄姚古鎮の昔ながらの風景と文化、大切な環境資源は住民から大切に守られ、残されてきたものだといえる。